北海道苫小牧市内のクラウドファンディング事情でクラファン成功スキームを読み解く|胆振メディアIBURI DOT SITE.
- 下川部 淳
- 6月6日
- 読了時間: 7分
更新日:6月16日
暮らしやすさで知られる苫小牧市では、市民による文化活動や地域プロジェクトも活発に行われており、これらの取り組みの中でクラウドファンディングを活用する動きが広がっています。
住みやすい街苫小牧市
北海道苫小牧市は人口約16万人を擁し、港・空港・鉄道・高速道路といった交通インフラが充実した都市です。石油や工業、港湾を中心とする産業が発展しており、近年では電子部品の製造拠点やカーボンニュートラル関連の大型事業も展開されるなど、さらなる活気を見せています。
一方で、海・川・山に囲まれた自然環境にも恵まれており、活火山・樽前山の生態系から育まれる苫小牧の水道水は「日本一美味しい水」として知られています。産業と自然が調和するこのまちは、暮らしやすさにも定評があります。
クラウドファンディングとは
暮らしやすさで知られる苫小牧市では、市民による文化活動や地域プロジェクトも活発に行われており、これらの取り組みの中でクラウドファンディングを活用する動きが広がっています。クラウドファンディングとは、インターネット上で不特定多数の人々から資金を募る仕組みで、起業や商品開発、地域活動、災害支援など多様な目的に活用されています。特に地域に根ざしたプロジェクトでは、想いやストーリーが共感を呼び、支援の輪が広がる傾向にあります。資金調達の手段としてだけでなく、共感をベースにした仲間づくりの手段としても注目されています。
私たちIBURI DOT SITE.もまた、クラウドファンディングを通じて地域メディア事業を立ち上げた経験を持ち、現在ではREADYFORのパートナーとして、地域の挑戦者たちを応援する立場にあります。本記事では「苫小牧市内のクラウドファンディング事情」をテーマに、これまでの事例を振り返りながら、成功のためのヒントとなる“スキーム”を独自の視点から読み解いていきます。
リザルト|【苫小牧市錦岡】人口減少が進む地元に、人が集まるコミュニティカフェを存続させたい
【このプロジェクトで実現したいこと】実現したいのは『交流の場として定着してきたコミュニティカフェの存続』であり、移転の機会を活かして下記の「3つの場」を実現することで、『人・情報・経験が集まる住民自治のプラットフォーム』へと発展させることです。 出典:プロジェクトページより
< IBURIDOT SITE.考察>
こちらのプロジェクトは、現職苫小牧市議会議員の嶋中康晴(しまなかやすはる)さんが運営するコミュニティカフェcafe aura(カフェオーラ)に関するものです。苫小牧市は東西約40kmに広がっており、そのcafe auraは苫小牧市西部西地区を所在地としています。議員として苫小牧市内の課題を情報収集しながら、自身も市民という立場で飲食店経営を通じた「西苫小牧」の課題解決の施策としてforGoodクラウドファンディングを実施されました。「当事者の課題」という立場でありながら、「地域住民にとっての必要性」が、プロジェクト本文にわかりやすく説明されており、読者に共感支持されたのではないでしょうか。
リザルト|苫小牧研究林の魅力を伝えたい!〜資料館の休日開放と散策路の整備〜
【月に一度から毎週末開館 にしたい】しかし、これらの施設に一般の方が入れるは月に一回、最終金曜日の一般開放日のみという状況でした。これまで限られた予算と人員のなかで工夫を凝らして魅力を伝える努力をしてきましたが、多くの方が訪問される週末に開館する人手を捻出することは金銭的に難しい状況です。そこで今回クラウドファンディングを実施することで週末に開館する資金を皆様から募らせていただけないかと考えました。
< IBURIDOT SITE.考察>
こちらのプロジェクトは、苫小牧市内で100年以上の歴史がある北海道大学研究施設の苫小牧研究林(北海道大学北方生物圏フィールド科学センター 苫小牧研究林)所属の植竹淳(うえたけじゅん)准教授が、森林資料館・森林記念館を休日にも開館し、樹木園内の案内をリデザインしたいというものです。
【市民に魅力を届けたい】職員の日常会話には、『今日はどこどこでネズミが、、』『あっちではキノコが、、、』といったネタが満載でした。こんなワクワクする環境の中、しだいに私はこんなに面白いことが毎日起きているのに、樹木園にきてくださっている一般の方々には何も届いていないという事実に疑問を持つようになりました。そしてこれまで表に出ていなかった情報を発信して共有するためにSNS(Twitter)を始めたり、地元のマイクロツーリズムの冊子(IBURI DOT SITE.)に寄稿したり、樹木園の案内マップを作成したりと魅力を伝えるための活動を始めました。 出典:IBURI DOT SITE.談
野鳥愛好家やカメラ愛好家にとっては、苫小牧研究林の魅力に惹きつけられ遠方から多くの愛好家が訪れる場所でありますが、苫小牧市民にとっては「演習林or研究林?」「入っていいの?」「え、苫小牧の水道水はここから取水してるの?」と魅力が伝わっていないという課題解決に向けたプロジェクト本文では課題提議だけではなく、苫小牧研究林の魅力がふんだんに説明されており、プロジェクトページ自体がエンタメコンテンツとして成り立っているように思えます。それでいて、論点がブレずに訴求されているため、読者に共感支持されたのではないでしょうか。
クラファン成功スキームを読み解く
IBURI DOT SITE.では、これまでのクラウドファンディング事例を通して、いくつかの共通したスキームやフレームワークが見えてきました。成功しているプロジェクトには、以下のような特徴があります。
1.「顔が見える」こと
「誰がプロジェクトを立ち上げたのか」「その人が何を思い、何をしようとしているのか」が明確であることは、共感を呼ぶうえで非常に重要です。クラウドファンディングでは、感情や想いといった“人の顔”が見えることが、支援者の心を動かす大きな要素になります。
2. 立場と語りかけが明確であること
文章の語り手(=一人称・二人称・三人称)が明確であることも成功の鍵です。特に、「私たちはこう考えています」「あなたにとって、こんな価値があります」といったように、読者に語りかける形で構成されているプロジェクトは、読み手にとって自分事として受け止めやすくなります。支援することでどんな良いことがあるのか、具体的にイメージできるようになっているのです。
3. アウトプットとアウトカムの整理
多くの成功事例では、「何を実現するのか(=アウトプット)」と「その結果、どんな未来が生まれるのか(=アウトカム)」が明確に分けて説明されています。たとえば、「引っ越し費用」や「看板制作費」といった具体的な資金用途(アウトプット)だけでなく、それによりどのような社会的・地域的な価値(アウトカム)が生まれるのかが、支援者に伝わるよう工夫されています。こうした構造により、支援者自身の“理想の未来像”とプロジェクトの目的が結びつきやすくなっています。
■ 成功・失敗プロジェクトの事例比較(簡易表)
項目 | 成功プロジェクトの特徴 | うまくいかなかったプロジェクトの特徴 |
顔が見えるか | はい(活動者の写真・ストーリーが丁寧に掲載) | いいえ(情報が抽象的、顔が見えない) |
誰に向けた文章か明確か | 「あなたへ」「私たちは」という視点が一貫している | 主語があいまいで、読者に語りかける言葉が少ない |
アウトプットの明確さ | 「●●万円を○○に使う」と具体的に記載 | 「活動資金に使います」とだけ記載 |
アウトカムの伝達 | 「これにより●●が実現し、地域がこう変わる」と未来像まで語られている | 変化の説明がなく、単なる“お願い”になっている |
共感ストーリーの強さ | 地域性・個人的背景・社会的意義などが語られ、共感が集まりやすい | 一般的でテンプレート的な説明で印象が弱い |
■ アウトプットとアウトカムの関係図(概念図)
[支援金]
↓
【アウトプット】(資金の使い道)
例:
看板の設置、引っ越し費用、チラシ印刷
↓
【アウトカム】(もたらされる変化・成果)
例:
地域の人に認知される
活動が継続できる
地域とのつながりが生まれる
↓
【最終的な目的】(目指す理想の姿)
例:
地域課題の解決
持続可能なまちづくり
若者の地元定着
クラファンしよう、そうしよう!
つらつらと長くなりましたが、宣伝させていただきます。
地域メディアIBURI DOT SITE.を運営するJ-TRADE合同会社(ジェイトレード)は、クラウドファンディングREADYFORパートナーです。挑戦する人の情熱をWebページで発信し、その想いに寄り添いながら共に伴走します。北海道苫小牧市を中心に胆振管内の室蘭市、苫小牧市、登別市、伊達市、豊浦町、壮瞥町、白老町、厚真町、洞爺湖町、安平町、むかわ町で魅力的なヒト・コト・モノを訴求しよう!
と、自身を訴求することで本文を締めくくりたいと思います。